ABOUT – 綾屋紗月

ABOUT

【診断以前】
4歳時より外界とつながっている感覚が乏しく、「自分は何者なのか」という問いに苦しみ続ける。虚弱で伏せがちな中高時代を過ごし、かといって原因もわからず、うつ浸りな思春期を過ごす。
15~16歳のときに教科書が読めなくなり、しばらく登校できなくなる。
大学時代は関東聴覚障害学生懇談会にて聴覚障害学生と共に活動しながら、音声で話すことに高いハードルを感じる自分の言葉として手話を習得する。
低血圧症、うつ病と、「自分のおかしさ」の原因を見つけたと思っては「やっぱり違う。」と思わされ、2006年、アスペルガー症候群の存在を知り、診断名をもらう。

【診断以後】
2007年以降、発達障害分野における当事者研究を行い、同分野での研究内容は、論文、著作、学会発表、アウトリーチ活動などで公表。

(当事者研究:障害を持つ本人が自身の経験を仲間と共に研究対象にする、2001年より始まった我が国固有の実践。様々な障害分野で広まり、自助の新しい技法としても、また、新しい学術の実践としても、医学・臨床心理学・教育学・社会学・哲学・人類学などから注目されている。)

2008年、「発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい」(医学書院,共著)を発表。従来、コミュニケーション障害という行動表出のレベルでとらえられてきた自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)を、本人の認知的経験のレベルから記述しなおし、ASDに関する新しい仮説を「情報のまとめあげ困難仮説」として提案。

2010年、「つながりの作法―同じでもなく違うでもなく」(NHK出版,共著)を発表。当事者研究の方法論に関する予備的研究を発表し、その後、実際のフィールドで内容及び方法の精緻化を探求している。

2011年、発達障害者を中心に運営・参加する当事者研究会をスタート。

2012年-2016年、科研費新学術領域「構成論的発達科学」(代表:國吉康夫・東京大学教授)という研究プロジェクトのもと、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員として雇用され、当事者研究会のファシリテーションを継続的に行うとともに、認知発達ロボティクス、医学、神経科学、社会学と協働し、当事者研究から導かれた仮説の検証等に関する研究を進めている。具体的な研究内容は以下のようなものである。

[当事者研究会の継続的ファシリテーションとアクションリサーチ]
2011年以降、継続的に主催している当事者研究会の中で記録された語りの音源データをもとに、ASDコミュニティにおいて生成される独自の社会的秩序(語りの順番交代や連鎖様式)についてエスノメソドロジー/会話分析(EM/CA)を用いて分析し、「言いっぱなし、聞きっぱなし」という独自の順番交代の秩序が維持されることで、発達障害者にとって語りやすく安全なコミュニケーション様式が実現されていることを報告。また、自助会で語られた内容のテキストマイニングから、1) ASD当事者の変わりにくい個体要因(impairment)と2) ASDに合った社会や言語のデザインの仮説を抽出し、一部を会報として公開。

[ソーシャル・マジョリティ研究会主宰]
2014年、当事者にとっての社会的障壁の詳細を明らかにするために、自助会の語りの内容から「当事者が感じている定型社会のコミュニケーション様式に関する疑問」を抽出し、それに応える関連学問分野(発声学、音声認知、感情社会学、エスノメソドロジー・会話分析、語用論)の知識を当事者に向けて講義する「ソーシャル・マジョリティ研究会」を実施。これまでもASD者に対する支援法として、定型社会におけるその場にふさわしい対応のしかたや場に応じた考え方を説明する教育技術であるソーシャルストーリー(Gray, 2006)の効果が注目されてきたが(藤野, 2005)、不変な定型社会への適応を目的としている点や、現実場面での汎化や応用の困難(大井, 2010)に批判もある。ソーシャル・マジョリティ研究会は、定型社会のデザインをその身体的基盤を含めて「知る」ことが目的であって、それを適応のヒントにするか、それとも環境改善に向けての潜在的ニーズの主張につなげるかは本人に任されている点で、既存の支援法とは異なっている。

2014年―2016年、立教大学『しょうがいと人権』兼任講師として、「当事者研究への招待」というテーマで講義。

現在、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員。発達障害者を中心に運営・参加する「おとえもじて」にて月1回、当事者研究会を開催中。精神障害や発達障害など、外側からは見えにくい症状を内側から記述し、仲間と共に自らのメカニズムを探っていく「当事者研究」を行っている。また、発達障害者にとって居心地の良いコミュニケーションスタイルは何かを模索している。

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