リハビリ~「人間再生研究会」に参加してきました

【wrote:熊谷】
今日は、東洋大学白山キャンパスで開催された、
「第一回 人間再生研究会」に参加してきました。
人間再生研究会2
この研究会は、
先日鼎談させていただいた
オートポイエーシス論の
河本英夫氏らが発起人となって、
『リハビリテーションをより充実したものにするための
 総合的検討を行う機会を設定』
するために
はじめられたものです。
今回は第一回目だったのですが、
イタリア発の新しいリハビリ法として
近年日本でも注目されている、
「認知運動療法」が取り上げられました。
人間再生研究会1
この療法は、90年以降急速に進歩してきた、
認知科学、脳神経科学の成果を、
リハビリテーションの世界にも
還流していこうという実践活動です。
(詳しくは、発起人の一人でもある
 宮本省三氏の著作を参照)

リハビリテーション・ルネサンス―心と脳と身体の回復、認知運動療法の挑戦 リハビリテーション・ルネサンス―心と脳と身体の回復、認知運動療法の挑戦
(2006/01)
宮本 省三

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すでに述べている私の持論ですが、
リハビリの際に介入する場所を、
物理的な肉体ではなく、
心やイメージ・努力に照準した場合、
いい面と悪い面があります。
リハビリをする側とされる側が
内面や文脈を共有せずに、
意味も分からず一方的に
体をぐいぐい押されたり捻じ曲げられたりするのでは、
リハビリは限りなく暴力に近接してしまいます。
だから、受け手の主観性に照準すること自体はいいことです。
しかし他方で、主観性に介入するアプローチには、
危うい面もあります。
熊谷自身も、
15年近くそういった
心理学的なフレームで行うリハビリを経験してきたのですが、
そこでは、リハビリがうまくいかないときに、
考え方や注意・努力の仕方に原因があるとされ、
責められるという局面がしばしば生じました。
物理的な肉体の問題ならあきらめるしかないけれど、
問題化されるのが可塑的な心理過程になると、
それこそ「努力や気の持ちようで」、
変化を青天井に期待してしまうということです。
よって、主観性に介入するアプローチで問題になるのは、
“引き際を見極める難しさ”です。
今回の発表者である人見眞理氏の実践は
その点、引き際が鮮やかで、好感が持てました。
人見氏の発表では、
現場を撮影した動画が映されたのですが、
リハビリを受ける側の怯えや軋みに対する
感度の高い様子が出ていました。
しかし、人見氏をよく知る河本氏のコメントによると、
人見氏はただ単に引いたり待ったりする
受容的な構えだけではなく、
ここぞというときには集中突破で
攻めに転じる局面もあるとのことでした。
それを聞いて、
そんなときの様子も拝見してみたいと思いました。
引き際や攻めのタイミングを見極めるセンスというのは、
たぶん、マニュアル化しにくい部分だと思います。
マニュアル化しにくいというのは、
正確に伝授しにくいということでもあります。
そういったセンスを身につけるためには、
リハビリをする側の感度を上げる必要があります。
リハビリする人が一生懸命であればあるほど、
目標への意欲が高まってしまい、
意識的に注目する部分も繰り出す所作も、
限定されたものになってしまう。
これでは、極端に感度が低くなった状態だといえます。
そういう状態を避けるためには、
他者の肉体に関わる前に、
まず、自らの肉体を感受性の高いものに
自己リハビリしておく必要があるかもしれません。
そのような意味で、
先日ご紹介した古武術介護のアプローチは、
従来問われることの少なかった、
施術者側の身体の可変性に注目するという意味で、
新展開に繋がるかもしれません。
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